腕・肘の症状
腕や肘関節に痛みがある方
肩から手までの部分を指す腕には、肘関節があります。腕や肘は、生活をする上で非常に重要な部位です。この部分を損傷すると、可動域が制限されることで、普段通りの生活が困難となる場合も少なくありません。スポーツや楽器演奏など、仕事や趣味にも大きな影響を与えます。
腕・肘の症状には、血管や神経の障害によって起こるものもあります。放置していると治療の効果は得られず、機能障害が残る可能性もあるため注意が必要です。腕や肘に動きにくさや、冷え、左右差など異常に気づいたら早めに受診をして下さい。
当院では、レントゲン検査をはじめ、筋肉・腱などの損傷を診断できる超音波検査(エコー)による診断も実施しております。被曝の心配もなく安心な検査です。お体の状態をみさせていただき、より精密な検査が必要であると判断した場合は、専門的な医療機関をご紹介させていただきます。症状のある方は、早めに受診をして下さい。
的確な診断で、QOL(生活の質)を下げないための治療に努めます。
腕・肘の構造
腕は、肩から肘までの上腕骨と、前腕にある2つの骨(外側の橈骨と内側の尺骨)で成り立ちます。肘関節にはいくつもの筋肉が存在し、腕の屈伸や「ひねり」など様々な動作ができるようになっています。
ご相談の多い症状
ケガ/外傷
橈骨遠位端骨折
上腕にある二つの骨のうち、外側の骨を「橈骨」といいます。橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)とは、手首の位置となる橈骨の端で、骨折が生じたものです。
とくに高齢の女性は骨粗鬆症によって骨が脆くなっていることが多く、簡単に骨折してしまいます。橈骨遠位端骨折をした際は、骨粗鬆症も視野に入れながら、骨密度検査(骨密度の測定)を検討してきます。
橈骨頭骨折
橈骨の肘関節に相当する部分を「橈骨頭」といいます。橈骨頭骨折は、転んだ時などに、肘を伸ばしたまま地面に手を付いて時などに起こることが多い骨折です。 肘を動かせないほどの激しい痛みや腫れが生じます。
画像検査を行い、血管や神経などの合併損傷の有無を確認します。骨折のズレが少ない場合は、1ヶ月前後ギプスで固定を行います。一方、骨折部分のズレが大きい場合は、外科的手術を検討します。
肘関節脱臼
脱臼は、骨と骨をつなぐ関節が本来の位置からズレている状態です。また、後方に脱臼すると、靭帯損傷や骨折といった合併症がみられることがあります。
肘の激しい痛みや腫れの症状があり、肘の曲げ伸ばしが困難となります。
画像検査で、肘関節の状況を確認します。治療では、全身麻酔を行い、外れた骨を正しい位置に戻す徒手整復を行います。
整復後は痛みが治まり、3週間前後を目安にギプスなどで固定を行います。 靭帯損傷や骨折を伴っている場合などは、外科的手術を検討することもあります。
子供に多いケガ・症状
肘内障/ちゅうないしょう
肘内障は、5歳以下の子供に多いケガです。転んで手を付いたりすることで肘の外側の骨が亜脱臼を起こし、肘が抜けた状態になります。
また、手をつないだり遊んでいて、親御さんがふと腕を引っ張ってしまったことでケガをすることも多いです。
腕を動かすと痛みが出るため、腕をだらんと下げたまま動かさなくなります。触診、視診で診断ができますが、レントゲンや超音波などの画像検査で骨折の有無を調べます。
治療では、徒手整復によって肘関節のズレを元に戻します。整復されると痛みは治まり、いつも通りに肘を曲げたり手を使えるようになります。
肘内障は繰り返すことがありますので、日常生活では十分に注意をしてください。
上腕骨顆上骨折
転んだ際に、肘を伸ばしたまま手を突くことで起こる骨折で、比較的、子供に起きやすいケガです。肘を動かせないほどの痛みと腫れの症状がでます。また、骨折により神経や血管が損傷を起こすと、手のしびれや冷えなどの症状が出ることがあります。
骨折部のズレが大きいと、徐々に皮下出血を起こします。 超音波検査、レントゲン検査で診断を行います。
治療では、固定装具で1ヶ月ほど固定をしますが、骨折のズレが大きい場合は、外科的手術を行うことがあります。
その他
肘部管症候群
肘部管は肘の内側にあるトンネルで、尺骨神経とよばれる小指側の感覚と手の中の筋肉を動かす神経の通り道になっています。肘部管症候群とは、この尺骨神経が肘部管の中で圧迫されたり引っ張られたりすることで、麻痺を起こした状態です。加齢や幼少期の骨折による変性、ガングリオンなどの腫瘤、スポーツなどが要因として考えられます。
初期は、手のひらの小指側、薬指、小指にしびれが生じます。進行すると、薬指や小指の曲げ伸ばしなどが困難となったり、手の筋肉が痩せたりします。
診断では、肘の内側を軽く叩いてその反応をみる検査をします。肘部管症候群の場合、小指や薬指にしびれが走ることが多いです。また、超音波検査などで肘の変性や神経の圧迫などを調べます。治療では、肘の安静を保ちながら、内服薬や注射療法を行います。症状が進行している場合などには、外科的手術を検討することもあります。
手の症状
手に痛みがある方
手首と手指は多くの小さな骨と関節で形成されています。手の甲と手首周辺にある「手根骨」と呼ばれる場所は、8個の骨が集まってできています。物を持つ、キャッチする、持ったものをあらゆる方向へ動かすなど、日常生活の広範囲で使われます。スポーツのあらゆるスキルにおいても重要な役割を果たし、体を支えるといった役割も担います。手首や手指の一関節を負傷するだけでも、日常生活およびスポーツにおける動きは、大きく制限されてしまいます。
一般的な手のケガ
靱帯の裂傷により、骨の位置がずれて脱臼が起こることがあります。手のケガは、腫れ、痛み、こわばりを引き起こし、動きが制限されてしまうことも多いです。
指の脱臼
親指や他の指の付け根、指の中央の関節(指が反りすぎたときに多い)、指の第一関節で起こることがあります。
舟状骨骨折
舟状骨を骨折すると、親指の付け根付近に圧痛と腫れが生じます。
舟状骨はレントゲンを撮っても画像には何も写らないことが多いです。そのため、骨折をしても早期では診断がつかないことも少なくありません。
有鉤骨の鉤部の骨折
棒で地面をたたいたときや、ゴルフのプレー中にクラブで芝生を打ったときなどに起こります。手のひらの下部、小指の付け根に圧痛が生じます。
親指のねんざ
手と親指をつないでいる靱帯が、通常は親指の手のひら側で断裂するケガです。この靱帯の捻挫が重症になると、ものをつまむことができなくなります。
舟状月状骨靱帯(手首の靱帯)の断裂
転倒して手をついたときなどに起こります。痛みはほとんど手首の手の甲側に生じます。
その他
手根管症候群
手根管は、手根骨と横手根靭帯で囲まれたトンネルで、この手根管内で、正中神経が何らかの原因で圧迫されることで、手首や指先に痛みやしびれの症状が起こります。手首を曲げると悪化します。朝にこわばりや腫れを感じることが多いです。
人さし指から中指にしびれや痛みを生じ、環指や親指まで広がることがあります。進行すると、親指の付け根のふくらんでいる部分(母指球)がやせてきて、日常生活にも影響が及びます。(ボタンがかけづらくなったり、縫い物などの細かい作業が困難となります。)
手を酷使している場合や、透析、外傷などでも手根管症候群を誘発します。妊娠・出産を経て、更年期などの女性に見られることもあります。
手根管症候群は、手を使いすぎないように安静にします。その後、内服薬やブロック注射(手根管内にステロイドを注射)、手関節を装具で固定することもあります。これらの保存治療でも改善が得られない場合は、手術を検討することもあります。